ラヴレス
「…っ、」
銀色の繊維が、視界の端で歪んだ。
(かあさん、)
まるで「私」ではない何かが、涙を流しているようだった。
ぶるりと震えた身体が、私を抱き締める「天使」の身体と重なる。
「…ひな、た、ひなたっ…」
皺が目立つ顔で、それでも精悍さを失わない美貌で、それなのにこどものように、涙を流す人。
こどものように、ただ一人を願って、乞うて、涙を流す人。
「…かあさ、」
気付けば、その声に、涙に、心に呼応するように、私はその銀色に顔を埋めて泣きじゃくっていた。
「かあさ、ん、…かあさんっ…」
聞こえていますか。
母さんが愛した「天使」は、今もここに居るよ。
(母さん、母さん、母さん…)
聞こえていますか。
「…ひなた、」
貴方を愛した声が、今も貴方の名前を呼んでいます。