ラヴレス
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「…叔父上」
キアランが呆然とした様子でアランの肩に手を掛けた。
錯乱した叔父が、知純を恋人であった「陽向」と混合している様は、余りにも異様で、胸を鋭く突き、堪(こた)えるものがある。
未だぎゅうと力の限り知純を抱き締めているアランの肩に、小さな知純はすっぽりと隠れていた。
ひくりと震える肩が痛々しく、けれど何者にも侵しがたい二人の空間が、確かにそこにあったのだ。
感化された涙を流すソフィが、部屋から出てきた看護婦に抱かれながら慰められている。
知純とアランは、たった一人の「陽向」という女性を想い、涙を流しているのだ。
彼女がもう、この世に居ないことに、初めて悼むことができたかのように。
なんて酷く、残酷で、悲しい事実だろう。