ラヴレス
その大声に、キアランが抱き上げていた少女――みさと、と言うらしい――が、びくりと肩を震わせた。
「校門で待ってなって言ったでしょう!どうしてちい姉が迎えに行く前に帰っちゃうの!?心配したんだからね!」
それを聞いて、キアランはぎょっとした。
まさか少女が勝手に学校を飛び出してきたとは思ってもみなかったからだ。
「先生達もびっくりして皆で捜してたんだよ!?」
彼女は不細工ではなかったが、その分、釣り上がった目が怒るとその威力を遺憾なく発揮していた。
じわじわとみさとが震え出したのが、腕を伝って解る。
キアランからみさとの表情は見えないが、涙を堪えているのは間違いない。
「とにかく、先生達に連絡しなきゃ…」
キアランが抱き上げているせいで、小学生のみさとより「チイネェ」のほうが視線が下になる。
いつもより違う位置にやっと気付いたらしい「チイネェ」は、眉を顰めて少女からキアランへと視線を向けた。
見慣れない外国人の姿に、その外国人に抱き上げられている妹の姿に、「チイネェ」の眉間の皺は更に深くなる。