ラヴレス
「…起きたか」
目を覚ますと、パチパチと目の前で暖炉が燃えていた。
柔らかく燃える小さな炎の揺らめきが、朝の清流のような強くない朝日と混じって霞む。
(…あれ?)
見ると、大きめのブランケットに包まれながら、何故かソフィと分厚い絨毯の上に転がっていた。
見上げた天井絵画には見覚えがある。
(…キアランの部屋だ)
「起きたなら、顔でも洗ってきたらどうだ」
相変わらず素っ気ない奴だな、と思いながら、何故、キアランの部屋で、しかも床で、暖炉の前で、ソフィと眠っていたのかが解らない。
先程からキアランが何か言っているが、意識が定まらなかった。
「…叔父上は、今はまた休んでいる。また目覚めたら、会いに行ってやってくれ」
そこではたと、思い出す。
昨夜、「天使」と初めて出会って、そして、彼は私を「ちいちゃん」と、呼んだのだ。
そして呼んだきり、気絶した。
「…あぁ、そうだった」
そのまま「天使」は部屋に戻され、再び眠りに就いたのだ。
そして、私を気遣ったソフィが一緒に寝ると言い出し、何故かキアランが部屋を提供し、昨夜は混乱のまま、この暖炉の前で眠りに就いた。