ラヴレス







「…陽向の写真だよ」

アランが、キアランに目配せをする。
見てくれ、と言っているような所為に、キアランはそのボロボロのアルバムを手に取った。

ずしり。
手に掛かる思った以上の重量が、そこに詰まる「想い」を物語っているようで。


(…何度も、)

安物の紙アルバム。
それらが、パンパンになるほどに詰め込まれた思い出。

(…何度も開いては、思い返していたんだろうか)

ゆっくりと捲った先に、見知った人物の面影のこども。
―――と、そのこどもの頬に頬を寄せ、豪快に笑う、ひとりの女性。


「…「ヒナタ」は、陽の当たる場所を指す言葉なんだ。彼女と出会った時、僕は、彼女の柔らかな笑顔に、確かに、暖かな「日向」を見たよ」

大学の友人達に連れられた美しい女性の居る店で。

特別美しいというわけでもなく、ただ無邪気で、柔らかな、明け透けな笑顔に。


(…叔父上は、恋をした)

病に冒されたとて、その想いはしこりと悔恨、希望となって彼の心に染み渡っている。




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