ラヴレス
「…キアラン」
柔らかな声に呼ばれ、キアランは写真から視線を引き剥がした。
まるでそこには、「彼女」の全てが詰めこまれているようで。
「知純さんを見つけてくれて、ありがとう」
病床に伏してから、ついぞ浮かべなかった穏やかな笑みを。
「知純さんを、私と引き合わせてくれて、ありがとう」
穏やかに時を過ごし、毎日のように向けられていた叔父の笑顔が向けられなくなった時。
「自分」では、叔父上を救えないのだと、酷く傷付いて。
まるでそれを挽回するように、「知純」を捜し出して。
「―――…っ、」
(僕の尻拭いに、僕は、彼女を巻き込んだにすぎないのか…)
愕然と浮かび上がったそれに、キアランは立ち上がった。
急に視線が上になったキアランに、アランは窺うように首を傾げて見せる。
その滑らかな銀髪の向こう側で、なにを想っているのか。
「…叔父上、また、来ます」
仕事に戻る。
お体にはくれぐれも気を付けて。
片言のように言葉を残し、キアランは逃げるようにアランの部屋をあとにした。
『―――君の大切なものと、引換に』
自分が、とてつもなく利己的な人間であると、突きつけられる。