ラヴレス









こちらを睨み付けてくる「チイネェ」を前に、このまま終わらせてなるものか、とキアランが口を開いた――時だった。




「ちい姉!てんしをおこっちゃダメ!」

キアランと「チイネェ」。
ふたりの中間に居たみさとが叫んだ。

具合が悪いのに、と、大人が慌てるほどの大声である。

これにはキアランも「チイネェ」も慌てた。



「…てんしはわるくないもん」

先程、「チイネェ」にこっぴどく叱られたせいで浮かんだ涙をとうとう頬へ流したみさとが、えずきながら必死に訴えかけてくる。



「てんしはわるくないぃいい」

要領は得ないが、みさとは必死だった。

その意地らしさに感化された「チイネェ」の怒りの炎が、みさとの涙によってじわじわと沈下してゆく。



「…ごめん、みさと。ちぃ姉が悪かった」

そして、素直にそう謝った。

困ったように眉尻を下げて、抱き上げているみさとの額に自分の頬を擦り寄せる。

まるで猫の親子が慰めあうような仕種で。

キアランはそれを眺めながら、ふたりが全く似ていないことに気がついた。

てっきり、みさとの実姉かと思い込んでいたがどうやら違うらしい。








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