ラヴレス
そのままジンを見限った知純は、庭を渡り歩いて職人の小屋を見つけたという。
英語が喋れないので、手振り身ぶりで、仕事中を捕まえた使用人に鍵を開けてもらい、必要な道具を引っ張りだしてきた。
「…私、チフミが好きよ」
黙ったまま自分の話を聞いていたキアランに、ソフィアは更に声を潜めて言った。
「出会ってまだ時間も経っていないけれど、私、彼女のこと、もっともっと知りたくなったわ」
それは、キアランも同じではないの?
晴れやかな青空の瞳がキアランに訴えていた。
「私達の大好きなアランが初めて愛した人の娘が、チフミで良かった、って」
青空の瞳が優しく細くなる。
ソフィアの言葉は、じわりとキアランの胸に染みて、やがて溶けた。