ラヴレス
(まあそのうち、礼くらいは言ってやろう)
しかし、人の顔を見ればバツが悪そうに視線を逸らすキアランを思うと、そう簡単なものでもないような気がする。
すぐ売り言葉に買い言葉を吐いてしまう自分も悪いとは思うが、あちらは知純自身を無視して、勝手に気まずい思いをしているような節がある。
理由なら思い付くが、果たしてそれが「脅迫してしまった後悔」からくるものなのかは、解らなかった。
「…ちいちゃん」
陽向の写真を見ながら黙り込んでしまった知純に、アランは真面目な声で彼女を呼んだ。
知純が素直に顔を上げると、アランの穏やかな表情に、どこか悲しみが滲んでいた。
どうしたのかと、知純が口を開く前に。
「私のせいで、不愉快な思いをさせてしまったこと、本当にごめんなさい。あの子は、キアランは、幼い時から私を慕ってくれていて、思い込むと一直線なところがあります。私のために、たまに暴走してしまうことも」
それは知純も良く解っていた。
キアランは暴走する。
私情ではなく、誰かに対する愛情から。