ラヴレス
とは言っても、ソフィアに言わせればフラワーアレンジメントは感性を豊かにする授業の一環で、メインはレディーの礼儀作法だという。
イギリスの伝統貴族は、今やその名ばかりとは言えど、長年積み重ねてきた歴史に見合うだけの立ち居振舞いが必要なのだそうだ。
一端のレディーになって、有力な御家に嫁ぐか、後ろ楯のある婿を貰うことが最終目的らしい。
なかには皇太子妃を狙っている子まで居るとか。
皆が皆、御家の為に必死なのだ。
「…リアル昼ドラ……」
知純には想像もつかない世界である。
「特に私のところには生徒が集まってきやすいの。私が教室にしてるこの邸には、キアランが居るから」
ソフィアは苦笑しながらそう漏らした。
(―――確かに、あの顔にこの財力だもんな。女の子達が放っておかないか…)
皇太子妃を狙うよりはハードルが低いが、それに見合うだけの地位と名、財産を手に入れられる。
肉食系の時代だなあ、と知純はぼんやりと考えた。
「…私は、キアランが居なきゃなんにも出来ない女の子なのよ」
それに反してこのソフィアはどうだろう。
自分に顧客が集まるのは、キアランが理由だと思い込み落ち込んでいる。