ラヴレス
誰もが羨むような容姿、愛らしさ、教養を持ち合わせていながら、それらは全てキアランのお陰なのだと彼女は言う。
言い分も解らなくもないが、少なくとも、そんなソフィアに憧れて集う女の子達は山と居る筈だ。
(贔屓目抜きに見ても、こんなに可愛いのに)
廊下と言うよりは回廊と言ったほうが正しい道を歩きながら、しょんぼりと落ち込むソフィアを横目で見る。
大きな妹みたいで、可愛いったらない。
ばかわいがりするキアランの気持ちがなんとなく解る。
「…私、礼儀作法とかそういうの、全然解らないし、覚えようとも思わないけど」
あんなクソひねくれた男と長年一緒に暮らしてきたというのに、ソフィアは純粋で優しくて、よく気が付くし、何より他人に対しての偏見もない。
真摯にこちらを見てくる目は真っ直ぐで、まるで産まれたての雛鳥を前にしている気になるのだ。