ラヴレス











『王子様は、白馬に乗ってお姫様を迎えに来たりしないのよ』



幼い頃、母はそう口にした。

シンデレラの絵本を抱える私を、穏やかな瞳で見つめながら。


じゃあ、なにに乗って迎えに来るの?と無邪気に尋ねた幼い私は、それはそれは無垢で無知で、可愛らしかっただろう。


母は答えた。






『リムジンよ』




女手ひとつで娘ひとり育てた彼女は、とてもシュールな母だった。











< 3 / 255 >

この作品をシェア

pagetop