ラヴレス
病に倒れた叔父上のたっての願いで、はるばる日本までやってきた――今回の来日で通算四回目だ。
名前しか解らない日本人女性を、何万という人口の中から捜し出さなくてはならない。
例え希望がなくとも、叔父上の最期の望みは必ず叶えると約束したからだ。
例えそれが、自身の人生を棒に振るようなものだとしても。
「…そういえば、キアラン」
スウィートルームに備え付けてあるゲストルームのデスクで仕事をしていた秘書が、主人の機嫌を推し測ることなく話しかけてきた。
「このホテルの近くに、「こころの家」という名前の養護施設があるそうですよ」
ホテルの受付に訊いてみたところ、そこに住んでいる娘が時々アルバイトをしにくる、とのことだった。
「寺の住職が、慈善活動として開いているようです。国からの支援金額がかなり微細で、…見落としていました」
キアランはそれを聞き、日中の出来事を思い出した。
両親の居ない少女。
血の繋がらない姉。
じじと、ばば。
嫌な符合が揃いそうで、キアランは頭を振った。
濡れたままのシルバーブロンドが、ぱさりと重く跳ねる。