ラヴレス











「…そんなものいつでも行けるだろう」


キアランは呆れた声で秘書の奮闘を叩き落とした。

女性に対して普段からあまり執着を見せない主人に、秘書は少しばかり気を揉む。



「…よろしいのですか?今夜のクラブは特に格式の高い店だとか」

自分の楽しみの為にも秘書は食い下がった。

キアランはもう部屋を出る気満々で、鏡の前で濡れた髪を手櫛でといている。





「酒も料理も期待できますよ」


秘書は必死だった。


「なにを今更。美味い飯が食いたいならここのレストランで充分だろう」


それはキアランも同じだったが、お互いに方向性が違いすぎる。





「大和撫子もたくさん居ますよ―――」


しかし、この言葉は悪かった。

秘書の言葉に、昼間の侮辱を思い出したキアランは。






「なにが大和撫子だ!」





俗世にまみれた秘書を、一喝した。










< 32 / 255 >

この作品をシェア

pagetop