ラヴレス
「…そんなものいつでも行けるだろう」
キアランは呆れた声で秘書の奮闘を叩き落とした。
女性に対して普段からあまり執着を見せない主人に、秘書は少しばかり気を揉む。
「…よろしいのですか?今夜のクラブは特に格式の高い店だとか」
自分の楽しみの為にも秘書は食い下がった。
キアランはもう部屋を出る気満々で、鏡の前で濡れた髪を手櫛でといている。
「酒も料理も期待できますよ」
秘書は必死だった。
「なにを今更。美味い飯が食いたいならここのレストランで充分だろう」
それはキアランも同じだったが、お互いに方向性が違いすぎる。
「大和撫子もたくさん居ますよ―――」
しかし、この言葉は悪かった。
秘書の言葉に、昼間の侮辱を思い出したキアランは。
「なにが大和撫子だ!」
俗世にまみれた秘書を、一喝した。