ラヴレス
それこそハズレなど数知れない。
石川の「こころの家」。
神奈川の「こころの家」。
佐賀の「こころの家」。
自らが足を運んだことなどかつてなかったが、リストアップした「こころの家」らしき場所の数の多さに、唖然とした。
『チフミ』を探すよう言い渡した部下の心労を思い、何度となく自己嫌悪に陥ったりもした。
「とりあえず、玄関に回りましょう」
大きな母屋は障子とガラスで閉ざされ、灯りは灯ってはいるが影は見当たらない。
どこを居住区にしているかなど解りもしないが、秘書の言葉にキアランはとりあえず頷いた―――。
「ぎゃあああああっ」
ガシャンッ。
ガタガタッバンッ…。
けたたましい音を立てて、母屋の裏に重なるように立てられた掘っ立て小屋のトタン製のドアが開いた。
というより、蝶番もなにもかもが外れて、トタンの扉は今やただのトタン板のように地面へと伏している。
そのトタンのドアがあった場所から、形をくり貫くように光が漏れていた。
「なんだ…?」
突然のことに、キアランと秘書は眉値を寄せて警戒する。