ラヴレス
「ふぎゃああああっ」
背後から一際大きな悲鳴が響く。
恐らく、鬼より怖い「チィネエ」が子供を捕まえようと近付いたのだろう。
普段、子供と接する機会のないキアランは、なんて大きな声だ――と半ば感心した。
とりあえず、このままこちらに火の粉が掛かることなく騒動が収まるのを待とう、とキアランが腹に決めたその時。
ぼす…っ。
「!?」
脚に衝撃を受け、キアランは眉を上げてそっと自身の膝辺りに目をやった。
―――無関係ではいられないらしい。
庭に突っ立っているキアランを見つけた男の子が、助けを求めるようにキアランの脚へと抱き着いてきたのだ。
「カンター!」
そして再び響く怒号。
どうやら、キアランの脚に無断でしがみついている裸ん坊は「カンタ」と言うらしい。
坊主頭のよく似合う、四、五歳の男の子だった。
「いいっ加減にしな!…つうかなににしがみついてんのアンタは!それからどうしてアンタがここに居るのか今すぐ説明しろニート!」
まさかのニート呼ばわり二回目である。
さすがにキアランは昼間の不愉快を思い出し、逸らしていた目を半裸の「チィネエ」へと向けた。