ラヴレス
『―――イギリスで最も有名な貴族であり、世界有数の資産家でもあるアルベルト・シュナウザー家の当主、キアラン氏が、本日未明、孤児支援活動の為に―――』
居間に置かれたアナログテレビに映る馴染みのアナウンサーが、聞きなれないニュースを読み上げていた。
金持ちの慈善事業ほど傲慢で不愉快なものはない、とは持論だ。
ただし、しないよりは幾らもまし、ではあるので、実際にあるとないとでは、やはりあったほうが助かりはするのだろうが。
「…だってよ、じいさん。うちにも支援してくんないかな」
メザシを口に放り投げて、白米と一緒に咀嚼する。
私の目の前に座る高齢のじいさんはツルッパゲの甚平姿で、その上からはばあさん手作りのちゃんちゃんこを羽織っていた。
「知るかい。金持ちの道楽には付き合いきれんから要らんわ」
「あらあ、でも資金提供は有難いわよ。ねぇ、智純」
じいさんの隣で緑茶を啜っていたばあさんが、穏やかな目を私に向けた。