ラヴレス









癖のない真っ直ぐのシルバーブロンドは、明度の低くなった古い蛍光灯の下でも輝きを失わない。

透けるような肌に浮かぶ紺碧の宝石に、ばあさんはほんのりと穏やかな笑みを浮かべた。



「―――して、貴方のような方がこの古寺へ何用で来られましたか」

普段のがさつな口調からは一転し、和尚らしく厳粛に口を開く老人に、キアランに彫刻のように整った笑みを向けた。



「突然のご訪問、お許しください。私は、キアラン・アナベルト・シュナウザーと申します。イギリスから来日しました」

キアランは慣れた様子で、日本文化に見合った挨拶を告げた。

浅く頭を下げ、会釈も忘れない。




「…アナベルトシュナウザー、」

キアランの自己紹介を聞いた和尚と奥方は、驚いたように目を丸くした。

まさか今朝方、ニュースで報道されていた人物が目の前に居るとは信じられない。

しかも秘書ひとりだけを連れてなど――まさか新手の詐欺師だろうか。

しかし湧いた疑惑は一瞬で吹き飛んだ。

「そのような人間」ではないことくらい、見れば解る。






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