ラヴレス
老夫婦ふたりが疑い無くこちらに視線を向けたのを確認して、キアランは改めて背筋を伸ばした。
嫌味ではない光沢を発するスーツが、彼の動きに合わせて白線を移す。
「私が日本に来た目的は、、二つ、あります」
それはどこか遠回しな言い方で、キアランの口調に老夫婦ふたりは大真面目に頷いた。
「ひとつは、メディアにも公表したように、日本各地に点在する養護施設の援助」
それは朝方のニュースでも流れていたことだ。
しかし住職には、ひとつだけ気になっている点があった。
「それは存じてはいるが、何故、貴方は自国ではなく日本の孤児達を救おうとなさるのか」
介護設備や養護施設等の発展は、日本より海外のほうが目覚ましいのは知っている。
だからと言って、何故、この日本なのか。
チャリティならば、明日の生活にすら苦しむ難民達が溢れているむ発展途上国でいい筈だ。
「日本」に援助――有り難くはあるが、なにもかもの理由が半端過ぎて理解できない。
住職の至極まっとうな意見に、キアランはふ、と息を吐いた。
聰明な人間は嫌いではない。