ラヴレス











「…それは、もうひとつの理由に関係しています」


キアランの碧眼が、ゆっくりと瞬いた。


「私達は、ある一人の日本人女性を捜しています。解っていることは、孤児であること、日本に点在する何処かの「こころの家」と、関わりを持ってているだろう、ということ」

キアランの口から、自分達が開く養護施設の名が語られたことに、奥方はまぁ、と小さく驚いた。

隣の住職は、なにも語らず、ただ慎重にキアランの話を見極めようとしている。


「養護施設に援助を始めたのも、その人物に関する手掛かりを掴むためです。今はまだ試験的な行いですが、もし、その女性が「こころの家」という養護施設で生活しているなら――私率いるアナベルト・シュナウザー家は、そちらの施設を半永久的に支持すると決めました」

キアランの力強い演説に、流石のふたりも驚愕を隠せないようだった。

彼らがそこまでして捜し出したいという人物は、彼らにとって一体なにに当たる人物なのだろうか。

ここまで聞けば、キアランがこの「こころの家」にやってきた理由が解る。










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