ラヴレス
「『あなべるすないざー』だってよ。かっけぇ」
「ポケモンみたーい」
「ぴかちゅ!」
「誰か、醤油とって」
「スナウザビーム!」
「ぐああっやられたあああ」
「おかわりー!」
朝食を静かに取る私とじいさん、ばあさんの隣では、ずらりと並んだ子供達が聞きなれないカタカナに反応して騒ぎ出している。
じっとできないお年頃が七人も揃えば、まぁ仕方がない。
じいさんとばあさんは、個人的な道徳心から、寺の敷地内にある一般住宅や母屋を利用して「グループホーム」を開いている。
―――若くして身籠り、産んだはいいが育てきれぬと預けられた子、親などはじめから知らない子、食わせてやってくれと親に泣きつかれ、預かったままこの寺の子になってしまった子、里親に出された先から逃げてきた子、別の養護施設から逃げてきた子。
事情は様々だが、もう十五年以上続いている老舗の児童養護施設だった。
そして、とうとうついたあだ名は「子捨て寺」。
捻りもなにもない、それぞれがそれぞれの事情を抱えて、この「こころの家」で生活している総勢七人の子供達には残酷なネーミング。