ラヴレス








アランってだれ。
私を捜してたってなに。
なにこれ、意味解んない。

脳内で確かに混乱しているのに、けれどどこかの端っこで、「母を裏切ったシルバーブロンドの天使」と、「目の前のシルバーブロンドの天使」を重ね見ていた。

私は母の「天使」なんか見たことないけど、でもそれは、つまり。





『―――こちらをお読みください』


そうしてキアランと秘書は、一先ずホテルに帰宅した。

そしてその夜、秘書から預かった資料をじいさんとばあさんとで、私は読み耽ったわけである。
とは言っても、読み耽るほどの量はない。
漢字で明記された「智純」にローマ字のフリガナ。推定十八から二十二歳あたり。
「こころの家」という養護施設になんたやらかんちゃら――なにせ英語で書かれているから、詳しくは良く解らない。


けれど、決定的なものがあった。

それは、「陽向」と、手書きで書かれた文字。
インクで描かれたそれは、文字というにはぐちゃぐちゃで、ミミズがのたくったような文字だったけれど、確かに「陽向」と書かれていた。




―――陽向。

私の母さんの名前。






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