ラヴレス
「叔父上は病気だったんだ。君の母君との約束を前に倒れ、そのまま意識不明になってしまった。重く見た一族が、彼をそのまま本国へと連れ帰ったんだ」
―――病気?
私はその一言に背筋が凍るのを感じた。
なにそれ、究極のすれ違い。
「…叔父上の病は完治しない。今も邸で寝たきりだ」
キアランの顔が歪む。
彼にとって叔父上は、大切な人なのだ。
「…君は昨日、僕に言ったね。―――孤児のことを何ひとつ解ってないバカが、偉そうにチャリティ活動なんて大したものだ、と」
それは智純の心底からの言葉だった。
純粋で繊細で、傷付きやすい子供達を波立たせるような軽率な行為を、許すわけにはいかない。
「その通りだ。僕自身が養護施設に足を踏み入れたのは確かに此処が初めてだった。なにも解っていなかった」
キアランは事実を伝える傍ら、謝罪も語りかけてきていた。
その真摯な態度に智純はたじろぐが、話はまだ終わっていない。
「―――けれどそれは、僕、キアラン・アナベルト・シュナウザーの真の目的が、チャリティとは別にあったからだ」
キアランは、目の前の茶卓に置かれた資料を智純の前へ進めた。