ラヴレス
「……すま、ない」
キアランは素直に謝った。
智純も、彼を責めることではないと解っている。
ただ、涙も鼻水も、悲しみも苦しさも、消えてはくれなかった。
「…けれど、叔父上だって、病気で起きられない身体で、それでも必死に、君の母君を捜し出して、連絡を取ろうとしていたんだ―――」
それでも、一族の妨害もあってそれは叶わなかった。
唯一、彼にもたらされた情報といえば。
「君の母君が亡くなったと聞いて、ショックの余り叔父上は再び意識不明になった」
そのまま目覚めなくていいと、何度願ったことか。
苦しみの人生で、たった一人だと決めた女性を、まるで置いていくように祖国へ連れ戻され、そしてとうとう、今度は自分がその女性に置いていかれてしまった。
もうどれだけ望んでも、触れることも声を聞くことも、叶わない。
「…けれど次に目覚めた時、叔父上は君の名前を呼んだ」
母に先立たれて、ひとり途方に暮れているかもしれない。
今この瞬間にも、寂しさで泣いているかもしれない。
―――会ったこともない「智純」という少女を、まるで実の娘のように。