ラヴレス
「今更、なにをされたって母さんは還らない。もういいよ」
叔父の、精一杯だったこの全てを、彼女は投げやりに拒絶し、嫌悪している。
苦しみも悲しみも、或いは悔しさは、叔父が感じたもののほうが何倍も強かったかもしれない。
「―――君は母君のことを嘆いてばかりだ。君の母君を迎えに行けなかった叔父上を、病床に伏していた叔父上を、最愛の人に裏切りの辛さを味あわせてしまった叔父上を、憐れだとは思わないのか」
キアランの言葉には、小さく鋭い棘が張り巡らされていた。
ただでさえ冷静を欠いている智純が、その物言いを素直に受け入れられるわけもない。
投げやりだった視線は、怒りの力を借りてみるみる内に爛々となり、智純はキアランを強く強く睨み付けた。
感情が高まっている分、泣くにも怒るにも、簡単に針は振れてしまう。