ラヴレス
『叔父上は、君だけでも幸せにと、』
それは利己的な自己満足だ。
智純にはそうとしか受け取れなかった。
一体、キアランが、キアランの叔父上とやらはなにがしたいのか。
母親が若くで死に、それなりの苦労もあったが、じいさんばあさん、子供達、会社で世話になっている気の良いオッサン達のお陰で、智純は今幸せだった。
それをいきなり現れて、過去の償いだかどうかで智純の人生を変えようとしている――やはりにっくきはキアラン・アナベルト・シュナウザーだ。
(…別に、寄付金なんて必要ない)
多少とは言え、国や檀家からの援助だってあるし、自分の稼ぎもある。
なにが嫌かって―――。
自分ひとりのものではない「こころの家」に、自分と母親にしか関係しないどこぞの金持ちが干渉することが腹立たしかった。
そして何もかも金で解決できると考えているような行動にも。
(…子供達を見る、あの憐れみに満ちた目が、ムカつくんだよ!)
ガシャンッ。
智純はセメントを混ぜていたスコップを地面に突き刺した。
智純が力持ちなら、或いはこれがアニメなら、地割が起きていただろう。
智純はそれほどに腹を立てていたのだ。