ラヴレス
「今朝も言ったけど、あんたのやりたいようにはさせないし、ならない。あんたの大好きな叔父上も待ってるんだから、いい加減、諦めて国に帰れ」
今朝も言った、とはあるが、実際はキアランを殴った一発にその思いが込められていたわけで、口に出したわけではない。
しかしキアランは、長い脚に腕を組み、なにやら考えこんでいる。
聞けよ、と腹立たしさが増しに増し、智純が眉を釣り上げた時、キアランはやっと智純の目を見た。
深い海のようで、ビー玉の色のようにキラキラと混じって眩しい、そんな眼が、智純を貫く。
「…その叔父上の容体が、急変した」
掠れるような声だった。
泣くのか、とも思ったが、キアランは表情を動かすこともなく、ただス、と智純を見ている。
それは智純にもショックな話題ではあったが、会ったことも話したこともない人間の病態など、正直言ってどうだってよかった。
そんなことに気を遣って、今の生活をないがしろにはできないし。
「…君を探し出すのに時間を費やし過ぎた。心労が重なり、このままでは持たない。…事態は、一刻を争うんだ」
しかしキアランにとってはそうじゃない。