忘れはしない
顔をしっかりつかまれ、無理矢理目を合わせられる。

若干潤んだ目、ほんのり紅い頬。

それが、目の前数十センチのところにある。

可愛い…な。

心臓が煩いくらいに音をたて、警鐘をならしている。

顔が、真っ赤に染まっていくのが自分でもわかる。

「ちょっ! 近いって!?」

だが、優希は離してくれない。

ますます、手に力を込め、離すまいとする。

「…私ね、好きな人がいるんだ」

「へ、へぇ、そうなんだ?」

すでに、俺は冷静な思考ができなくなっていた。

胸が苦しい。息ができない。

それでも、顔をつかまれているため、逃げることもできない。
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