忘れはしない
「そ、その前に、ちょっと優希と話をさせてもらってもいいですか?」

「ああ、もちろんだよ。…部屋は覚えてるかい?」

頷く。

確か、二回の一番奥の部屋だった。

「じゃあ、行ってきな。私達は、下で待ってるからさ」

見ると、いつの間にか早紀ちゃんが食器を持って佇んでいた。

その表情はどこか暗い。

「お姉ちゃん、きっと、ずっと待ってたと思うんです。だから…」

言い終わらない内に、俺は、そっと彼女の頭を撫でる。

「ありがとう、早紀ちゃん。君がいなかったら、俺はここに立っていなかったよ。ホントにありがとう」
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