忘れはしない
部屋に一歩、足を踏み入れるととても懐かしい感じがした。

この部屋に来るのは何年ぶりだろう。

優希と一緒に住み始めたのが一年前だから、だいたいそのくらいだろう。

あの頃とほとんど変わらないような気がしたが、ただ一つだけ、部屋の隅におかれている仏壇に違和感をおぼえる。

仏壇の真ん中には、優希があの無邪気な顔で微笑んでいた。

「ただいま、優希」

返事は無い。が、かまわず俺は優希の前に座る。



何から話したらいいものか……。

とりあえず、俺は持ってきたコスモスを供える。

「お前、好きだったよな。道端に咲いてるやつを見つけては、何十分も飽きずに見てたな。……はは、あれには参ったぞ?」

優希は、相変わらず微笑んでいる。

だが、どこか文句を言いたそうな感じがするのは気のせいか。
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