忘れはしない
「……え?」

不意に、後ろから声をかけられる。

今の、声は……。

はっとして、振り返る。

「久しぶりだね。元気にしてた?」

優…季…?

「どうしたの? 鬼が豆鉄砲食らったような顔して」

俺を見下ろすように、優希が腰に手を当て立っていた。

あの日の、あの時の、あの姿のままで……。

「……それを言うなら鳩が豆鉄砲、だろ?」

「んー、そうとも言うわね。まぁ、どっちも変わらないわよ」

そう言って笑う彼女の顔は、俺の記憶にある俺の大好きな笑顔そのものだった。


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