忘れはしない
いつの間にか、優希は目に涙を浮かべている。

「無理矢理連れて行かれて死んだのなら恨みつらみもあるかもしれないわよ!でも、私は自分から喜んでついて行った。たとえ死んだからといって、それは私のせいでしかない。京介のせいなんて言うのは論外よ!?ありえないわ!」

俺は、何も言えなかった。確かに優希の言っていることは正しいのかもしれない。でも、だからといって、簡単に罪の意識は消えるものでもない。

「…お願い、京介。自分を責めないで?あんたがそんなんじゃ私が浮かばれないわ」

死んでも、俺のことばかり心配してるんだな。
お前が一番辛いはずなのに…。

「ごめん。情けないな、俺は…」

「…そうね。バカで鈍感で無知で甲斐性なしの情けない最低の男よ」

涙をぬぐいながら言う。

「はは、その通りだな」

言い返せない。本当にその通りだと思うから。

「でも」

優希は最高の笑顔で言った。

「そんなあなたが大好き!私にとっては何よりも大事な最高の男よ」

…ありがとう、優希。俺だってお前が一番大切だよ。

そして、

「俺もお前が大好きだよ、優希」

涙があふれ出す。
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