忘れはしない
「あ」

「バカやろう…」

もう一度、つぶやく。

「ダメ、だよ。離して!私のことは忘れてよ…」

逃れようともがくが、俺は離さない。なお一層、力を込め抱きしめる。

「どうしてこんな時まで俺のことばかり気にしてるんだよ!?こんな時くらい、わがまま言えよ!」

もがく力が弱くなっていく。

壊れそうなくらい小さな身体に、どれだけの葛藤があったのだろうか。

「お前の全てを、受け止めてやる。だから、正直な気持ちを聞かせてほしい」

「…したい」

「ん?」

「う、…京介と、結婚、したいよぅ」

小さく、だが、はっきりと聞こえた。優希の本当の気持ちが。

「ああ、しような」

力を和らげ、優しく抱きしめる。胸に頭を預けてくる優希を感じながら、この時が永遠に続けばいいのにと思った。
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