忘れはしない
「あ、最後に一つだけ約束して。もう絶対に自分を責めないで?私はもう、十分幸せだったから」

「…わかった。頑張ってみるよ」

すぐには無理だろう。だが、今の優希の言葉を思い出せば楽にはなれるかもしれない。

「あ、後もう一つ」

「ああ、いくらでも聞いてやるよ」

「そんなにいくつもないってば。…別に浮気してもいいからね?私は京介にも幸せになってもらいたいし」

こいつは…。

軽くデコピンしてやる。

「痛っ!?なによ~?」

「バカなこと言うな、嫌なくせに。俺はお前だけだよ」

「…バカ」

爆発しそうなくらい顔を真っ赤にして照れている。

「でも、早紀だったら許せるかな。あの子、奥手だから彼氏とかできないのよね、綺麗なのに。変なのにつきまとわれても困るし。というわけで、早紀のことよろしくね」

「どういうわけだよ!?」

おどけた表情でまくし立てる。

まったく、最後の最後までこいつは。

「あと、お父さんとお母さんのことも、ね」

「ああ、任しとけ」

急にシーンと静まりかえる。

その時が来たようだ。

「最後に言っとく。愛してるぜ」

思い切り満面の笑みで言ってやった。

「ふふ、私もよ。愛してるわ」

そして、優希を抱き寄せ唇をかわす。

ありがとう、優希。




さようなら。
< 62 / 67 >

この作品をシェア

pagetop