忘れはしない
キスを交わした後、俺の意識は急速に遠のいていき、気がつけば一階の居間に寝かされていた。

おばさん曰く、大きな物音がして何事かと見に来てみれば俺が倒れていたらしい。

救急車を呼ぼうとしたのだが、規則正しい寝息が聞こえてきたので疲れがたまって眠ってしまったんだろうと思い早紀ちゃんと二人で居間まで運んだとのこと。

重すぎて肩がはずれるかと思ったよ、と笑いながら言われたときは、申し訳なくて顔を見ることができなかった。


あれは、夢だったのだろうか?

俺が自分の心が壊れないように創り出した、勝手な妄想だったのかもしれない。

だが、最後に交わしたキスの余韻と、右手に感じる温かなぬくもりだけはあれが夢ではなかったんだと実感させてくれた。

おばさん達にそのことを話すと、以外にもすんなり信じてくれた。

「ありがとう」

の一言と一緒に。
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