ラブ☆ヴォイス
「もし…もし…。」
「お前、自分でアドレス押し付けといてメールしてこないってどういう神経してるわけ?」
「へ?」

 電話越しのあっくんの声はなんだかやたらに不機嫌に聞こえる。しかも、メールをしなかったことを怒られている…らしい。

「だっ…だって…あっくんお仕事忙しいのかなって思ってたし。」
「忙しいけど。」
「でしょ?だからあたしなんかがメールしたら迷惑かなって…。」
「お前が俺にかけた数々の迷惑を反省してのその発言か?」
「ひどっ…あたしそんなに迷惑かけてな…。」
「お前の愚痴を聞き、酔っ払いのお前を泊め、次の日に寝床という名のサボリ場の提供。…これでも迷惑かけてないって言えんのか?」
「いっ…言えません。」

 そこまで言われると、むしろ迷惑しかかけていない気がしてくる。

「数々の多大なる迷惑をかけられていて、今更メールの何通かを迷惑だとか思うと思うか?」
「え…?」
「逆に気味悪いっつの。むしろ凄まじい量のメールが来ることを覚悟していたんだが。」
「…してもいいの?」
「は?」
「メールしてもいいの?」
「してよくなかったらアドレスを教えたりしない。少なくとも俺は。」

 声はもちろんぶっきらぼうで、ちっとも『先生』らしい優しさなんかない。それでも、言ってることはものすごく…ものすっごく…。

「あっくんが優しい…。」
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