ラブ☆ヴォイス
「なに…もしかして俺のファン?」

 …声が完全にからかってるようにしか聞こえない。でもそんな声ですらかっこいいのだから本当にずるい。

「ただのファンじゃないっ。」
「熱烈ファンってこと?」
「そうじゃないっ!」

 ただの『ファン』という括りに入れられてしまうのが唯としては何故だか嫌だった。もちろん声優さんとしても好きだけれど、ただの『ファン』じゃない。

「…ごめん。意味分かんない。」
「本気で好きなのっ!」

 ここまでくれば、勢いに任せるしかない。恋愛経験なんてゼロだ。だからどうぶつかっていくのが正しいのかなんて分からない。でも、会えない人が隣人になり、、でも向こうは忙しくていつ帰ってくるのか分からなくて、もしかしたらもう2度と会えないかもしれない。だったら今しかない。

「あー…そう。ありがとう。でもごめんなさい。」

 すごい棒読みだ。棒読みすぎて涙も出てこない。ごめんなさいはフラれるときに聞く言葉だということは恋愛経験値ゼロでも分かる。

「…俺、声優オタクな女の子とか絶対無理だから。じゃー。」

 バタン、と無機質な音だけが残って、無情にもドアは閉まった。唯の立場は本格的にない。って待ってて。あたしは…

「声優オタクなんかじゃなーいっ!!!!!」

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