ラブ☆ヴォイス
「…訊かないよ、あたしからは。でも…もしあっくんが話したくなったら聞くよ。いつでも。」

 さっきまでぐずぐずやってた奴とは思えないほど強い目で、唯はそう言った。なんなんだよ、お前って奴は。忙しい奴め。

「…だからね、そんなに悲しい顔、しないで。」

 過去に置いてきたはずの人間に再会すると、どうして人はこんなにも揺らぐんだろう。悲しい顔なんてしているつもりはない。それなのにいつの間にか、他人にそう見えてしまう程度に表情は崩れている。

「…チビのくせに生意気なんだよ。お前はお前の心配だけしとけ。」
「あっくんのこと好きだから心配なの!そのくらい分かってよ!」


 さすがに目を逸らせなくなってきた。真っすぐすぎる想いをぶつけられ続けることに。好きだと言われれば言われるほど、大嫌いなはずのその言葉が嫌いではなくなっていく、妙な感覚。

「分かってるよ。ちゃんと、な。」

 分かっている。どうして唯が泣いたのか。誰を想って泣いたのか。自分には不釣り合いな想いをただ届けてくれる唯にいつしか甘えていた自分がいたことにも、全て。その全てを認めるのは癪ではあるけれど。
 言われた唯はというとぽかんとした表情を浮かべてる。好きな奴にそんなアホな表情見せていいのかよ、バーカ。
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