ラブ☆ヴォイス
「間抜けな顔してんじゃねぇよ。」
「だっ…だって初めてあっくんがあたしの気持ち…受け取ってくれたんだもん…。」
「…ったくポジティブだよな、お前。」
「え…?」
「そういうセリフは普通、両想いになった時に言うもんだ。」
「…だって、両想いなんて夢のまた夢だから…。いいの、気持ちを分かってもらえるだけで。」
「あっそ。」

 好き好き言う割には変なところ割り切っている唯に苦笑が漏れた。でも、ま…言ってやるか。一応、訊かないでいるっていう気を遣えたわけだし。そう心の中で呟いて、伝えるべき言葉を絞り出す。せっかくだから、とびきりいい声で。

「ありがとな。」
「ふぇ…?」
「今、ただいてくれるっつーのは…その…なんだ…まぁ…助かった。お前がいて良かったよ。俺一人だったらああしてかわせたかどうか分かんね。」
「あたし…役に立てた?」
「…ま、少しはな。」
「少しでも、あっくんの役に立てたんなら…嬉しい。」

 またその瞳に涙が溜まっていく。

「…泣くなよ。面倒くせぇから。」
「…泣きたくなるようなこと言わないでー!」
「知るかんなもん!いいからちゃんと部屋戻っとけ。じゃーな。」
「ばっ…バイバイっ!」

 そっと自分の家のドアを閉めた。…ちょっと甘やかしすぎたか。そんなことをふと思ったけれど、嘘はなに一つ言っていなかった。
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