ラブ☆ヴォイス
* * *

「はぁっ…っ…。」

 バタン!
 かなり大きい音を立てて扉を閉めてしまった。玄関のドアを背にして、身体がずるずると滑り落ちていく。

「…うー…やってしまった…。なんであたし…あんな酷いこと…。」

 でも、腹が立ったのが全てだ。萱原の言葉にも、何も言わない祥にも。
 それと…―――何も言ってはもらえない、惨めな自分にも。

「これじゃ…八つ当たりだ…あたし。」

 もやもやした挙句八つ当たりで喧嘩みたいになってしまうなんて、冷静に考えてみれば最低だ。そんなことを思った時、カバンの中の携帯がブルブルと震えた。カバンから出して開くと、そこには…

「あっくん…?」

 着信だ。あっくんからの。なんで、こんなタイミングで?顔も声も心も全てぐしゃぐしゃだけれど、電話に出ないという選択肢は取れない。唯はピッと通話ボタンを押した。
< 165 / 396 >

この作品をシェア

pagetop