ラブ☆ヴォイス
「俺はお前に何も話してねぇのに、俺の過去に巻き込まれて泣いてる。
…だから悪い、俺が。」

 あっくんの視線がゆっくりと落ちていくのが分かる。違うの、そうじゃない。そんな顔をしてほしいわけじゃない。

「あたしは…あっくんが悪いなんて少しも思ってない…。…ホントに悪いのは…あたし…なの。」
「……。」

 あっくんは俯いたまま、何も言わない。

「萱原さんの言葉に、イライラしたのは…ホントだよ。でもね、コーヒーかけた理由はそれだけじゃない。」
「なんだよ?」

 俯いたまま、ぼそっとあっくんがそう言った。

「八つ当たりしたの。萱原さんに。」
「八つ当たり?」

 あっくんが顔を上げた。ふと視線が絡み合う。

「何にも知らない自分にもやもやして、あっくんと祥さん、そして萱原さんの過去にもやもやして、そのもやもやをぶつけたの、萱原さんに。」

 こんなこと言って、嫌われちゃうんだろうな。でも、それでもいいや。…ホントはよくないけど。
 あっくんが自分を責めなくて済むならそれで。悪いのはあたしだよ、あっくん。

「あっくんのこと、何も知らない自分に腹が立って…イライラした気持ちを萱原さんにぶつけるなんて…あたし、最低なんだ。」
「…なんでお前がそうやって、自分を傷付ける言葉ばっかり言わなきゃなんねぇんだよ?」
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