ラブ☆ヴォイス
* * *

「…夏の海で恋のバトルなんてなかなかやるじゃない、光。」

 唯が着替えのために洗面所に入ってしまって、誰もいない静かな空間。だからこそ言える、この言葉。

「ま、御堂明博は我関せずな顔してたけど。」

 それもいつまで続くかしら、と思うと真夏の海も悪くない。

「唯は意外とモテるのよ?」

 自分ばかりが好きだ好きだと言われていると、ついつい油断してしまう気持ちは、華にも少しだけ分かる。〝誰かにとられるかもしれない〟ということを忘れてしまう。人の心は不安定で移ろいやすいものなのに。

「唯ーまだなの?」
「…今終わった!」

 上に薄手のパーカーを羽織って出てきた唯。それじゃ見えない。見せないと意味がない。

「ずっと脱がないつもり?」
「脱がないんじゃなくて脱げないの!」
「ま、海行ったら見せつけてやろうじゃないの。」
「えぇー無理!」

 嫌そうな顔をした唯を引っ張りながら、華は待ち合わせの場所へと向かった。
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