ラブ☆ヴォイス
 声優好きな人間も結構いるもんだなと、握手に応じる達也の姿を見て思う。そういえば、あいつも最初はそんなやつだと思っていた。最初は。…じゃあ今は?そう自分に問い掛けそうになって押し留まる。それ以上訊いても、答えを出すことを躊躇うのは自分だ。

「応援してますっ!頑張ってください!」
「ありがとうねー♪」
「…ありがとうございます。」

 女たちが去って、明博は溜め息を吐いた。

「ファン対応悪いなー御堂。」
「…驚いただけだよ。普段ねぇし、こういうこと。」
「声優好きの女子って最近増えてるじゃん?」
「話は聞いてたけど、あいつ以外は初めてだったからな。顔見てすぐバレたのは。」
「…声優さんってあんまりバレないものなんですか?」
「んー…まぁ、芸能人みたいにテレビに顔、露出したりしないからねー。露出多めの声優もいるけど、俺も御堂もテレビ出ないし、雑誌も少し…だしね。見ようと思わないと顔は見ないわけでさ。声だけで判断するのは難しいでしょ。」
「そう言われてみればそうかも…。」
「それで、話はがらっと変わるけど、御堂は早く唯ちゃん追い掛けなよ。今日の唯ちゃんはいつもの可愛さにプラス水着っていう最強装備だよ?放っておけば変な男がついてきちゃう可能性100%だと思うけど?」
「あいつが行くだろ。」
「…あー珍し。どうしたわけ?」

 からかうわけでもなく、ただ少し憐れんだ目で明博を見つめ、達也がそう言った。

「別に。あいつが行ったから俺が行く必要ねぇだけだよ。」
「今日、結構混んでるんだよ?一人で見つけられると思うの?」
「あいつなら見つけるよ。」
「はぁー…じゃあこうしよう!みんなであの二人を探す!見つけ次第ホテルに集合!それでいいよね?」
「そうっすねー…確かに人混みすごそうだし…。」
「んじゃ決まり。御堂も探すんだよ?」
「…分かった。」
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