ラブ☆ヴォイス
「何って…普通にキスだけど。」
「あたしっ…好きな人とじゃなきゃ…。」
「俺だって好きな奴にしかこんなことしない。」
「え…?」
「…分かっただろ、俺の気持ち。」
「気持ち…。」

 分かったんだな、さすがに。声の戸惑いが消えない。

「俺ならあいつよりもお前のそばにいてやれる。お前のことも、あいつよりずっと知ってる。…最近元気ねぇのも、あいつのせいなんだろ?」
「…っ…違っ…。」
「そんな顔で違うとか言われても説得力ねぇんだよ。俺ならお前にそんな顔はさせない。…ずっと、すっげぇ前から、好きだったんだ。唯のこと。」

 やけにクリアに聞こえる〝好き〟という言葉。自分がこんな風に言えないと知っているからこそ、クリアに聞こえるのかもしれない。それに、奴の言うことはもっともだった。
 あいつのことを俺は全然知らない。あいつだって俺のことは全然知らない。そばにだって、いつでもいれるわけじゃない。あいつがそばにいようと努力してくれているのは知っている。それでも、近くにいるようで、君は遠い。
< 194 / 396 >

この作品をシェア

pagetop