ラブ☆ヴォイス
「…まさに正論、だよな。」

 奴は自分とは真逆の人間だと、そう思った。そして今更ながら、唯と自分の間には何もないことに気付く。他に好きな奴がいるということを知っていながら想い続けたり、告白したりなんてことはもうできない。ずるいけれども、追い掛けてくれなくては、…続かない。

〝好き〟だなんて口にするのも嫌なんだ。

 気持ちは変わるから。たやすく。同じ時間を共有できなければすぐにでも、変わる。

「…どんだけトラウマなんだよ…バッカみてぇ、俺。」

 過去に縛られ、身動きが取れない。それほどまでに、好きだった。永遠だと思ってたんだよ、少なくとも俺は。

「…っ…なんだよ、思い出させんな、くそっ…。」

 不意に蘇る記憶。彼女の涙、彼女の言葉…最後に言われた言葉が、胸をしめつける。

「…あいつは普通の恋をすればいい。俺じゃ…ねぇほうがいい。」

 どうして全て話そうなんてあいつに言ったのだろう。…話す必要なんて、ない話なんだ。知ってもらってもどうしようもない。

「…あいつにしとけ、…唯。」

 仕事だったら良かった。仕事だったらもっといい声で、もっといい演技ができたのに。
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