ラブ☆ヴォイス
 あっくんの足がぴたりと止まる。それでも、振り返ってはくれない。

「…なんだよ。」
「あたし、あっくんに何かした?」
「別に。」
「じゃあなんで…そんなこと言うの?」
「気が変わっただけだ。」
「そうじゃなくて…あたしに話してくれるって…言ったのに。」
「…だから、話す必要がなくなったんだよ。」
「どうして!?あたし、あっくんを傷付けるようなことしたの?」
「…そういうことじゃない。」
「じゃあ何?あたしっ…分かんないよっ…!」

 涙のせいで声が詰まる。分からない。あっくんが何を言っているのか全く分からない。涙が落ちるけれど、拭ってる余裕もない。

「…分かんなくていい。お前は、お前を想ってくれるやつを大事にしろよ。」

 バタンと無機質な音がして、そのままあっくんが見えなくなった。
あっくんがいなくなったからというのもあったけれど、涙が溜まりすぎて視界が歪んで、唯の目には本当に何も写らなかった。
 唯の足から力が抜けた。床に座り込んで瞬きをすると、両目からぼろっと涙が落ちた。
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