ラブ☆ヴォイス
「まぁ、御堂明博が過去に何を抱えていようとあたしの知ったこっちゃないわ。…でも、唯を傷付けたら許さない。」
「御堂にそう言っておくよ。」
「そうして頂戴。」

 それだけ言って、華は達也に背を向けた。別にどこかに行きたいわけではなく、ただ突発的に部屋を出ただけの達也は行き場を失った。…海でも行くかな。でもなぁ…カップルいっぱいいるのやだしな。そんなどうでもいいことを思いながら、明博と唯のことを思い浮かべる。

 御堂は多分、唯ちゃんを甘く見過ぎたんだと思う。あの子は全然違うんだ。祥さんとは、全く。嘘は吐けない。素直で真っすぐで向こう見ずで。だから響く。その声も、その想いも。

 …本当はきっと、御堂だって心のどこかでちゃんと分かっている。〝違う〟ってことを。

「…過去の呪縛から解き放たれるといいね、御堂。」

 今度こそ、大切な子と大切な時間を過ごせるように。

「…って俺も会いたくなっちゃったじゃん。あーあ。」

 夏に似合わない切ない呟きが、自然に零れた。
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