ラブ☆ヴォイス
「…壊すの嫌だった。唯が全然俺のこと、そういう対象として見てねぇことくらい、ちゃんと分かってたし。でも、特に変な男も寄って来なかったから、それでもいいって思ってた。…だけど…。」

 一瞬、光が目を伏せた。その姿が少し痛く見えて、ズキっと心臓が音を立てる。

「すげぇ今更だけど、もっと最初からちゃんとしておけばよかったって、本気で思うよ。…まさか近くに来るとは思わなかった。」
「…あっくんのこと?」
「それ以外誰がいるんだよ。」
「あ、そ…そか…。」
「つーかあいつ、お前に見せられた雑誌とかよりも本物の方がかっこいいし。なんなんだよ、声も良くて顔もイケメンとか。…ありえねー。」
「なっ…有り得るもんっ!」
「分かってるっつーの。実際いるし。でも、不公平だよな。」
「不公平?」
「…声良くて顔も良いっつーのも不公平だけど…。」

 光が一度、そこで言葉を切った。そして小さく息を吐いてから言葉を続ける。

「…かっさらって行くんだもんな。すげー簡単に。俺に振り向かせる暇も与えないで。」
「…っ…。」

 こんな光の…悲しそうな声、初めて聞く。思わずじわりと涙が込み上げてくる。
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