ラブ☆ヴォイス
「…どうしてそう言い切れる?」
「あの子は御堂を諦めたりしないよ。どれだけ傷付けられても、追い掛けられるだけの想いがあるから。…まさか、そこに気付いてないはずないよね?」
「……。」

 …分からなくはない。だけど、信じきれるかといったら分からない。どうしても、信じることが難しい。俺には。俺はとても、弱いから。

「寂しい想いはさせるよ。絶対に。でも、それに耐えられなかったのは祥さんであって唯ちゃんじゃないよ。…唯ちゃんとは始めてみないと、分からない。始めてみて分かることもある。」

 真面目すぎるトーンで達也がそう言う。似合わないはずなのに、こういう時だけ妙に説得力のある声色に変わるところがカチンとくる。

「なぁ、御堂。唯ちゃんの存在が自分の中でただの隣人じゃないってことぐらい、ちゃんと分かってるんだろ?…じゃないと、あんな傷付いた顔、するはずない。」
「傷付いた顔?…あいつのか?」
「じゃなくて。御堂の顔だよ。」
「俺…?」
「唯ちゃんを拒絶したあの日。…唯ちゃん以上に傷付いた顔をしてたのは御堂だったよ。少なくとも、俺にはそう見えた。唯ちゃんを傷付けることが今の御堂には一番辛いことみたいに見える。…違う?」

 その問いかけに即答できない。それがつまりは答えなのだろう。
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