ラブ☆ヴォイス
「でもっ…あっくんはお仕事がっ…。」
「仕事にかまけて祥をちゃんと見つめなかったのは俺だ。…祥に甘えてたんだ。俺のファンだから、俺を決して裏切ったりしないって。ファンだからこそ、俺の仕事を理解し、その成果を一緒に喜んでくれるって…思ってたんだよ。」
「……。」
「だから、萱原にそう言われた時、どこか冷めた思いがしたな。…俺は本当に祥を愛していたのか分からなくなった。それと同時に、祥の想いへの不信感が現れた。祥は俺を、一人の男として愛してくれていたのか、それとも…声優御堂明博として、ファンの一人として好きな気持ちを錯覚していただけなのかって…。
…そういう疑問が浮かんでくる自分に嫌気も差した。それからだよ、〝好き〟って言葉を信じられなくなったのは。」
「…え…?」
「俺を好きって、どういう好きなんだそれって思うようになった。ファンとして好きならそれはそれでいい。ファンがいてくれるのは嬉しい。でも、好きだと言ってくれる人の好きが俺に向いているのか、声優の俺に向いているのかは分からなくなった。…声優として仕事が増えてからは、そこそこモテるようになったんだよ。でも、どの告白も断った。祥の時みたいになるのが関の山だと思ったから。」
「……。」

 自分の気持ちは、あっくんには重荷だったんだと思うと辛くもある。ただ、どうして拒まれたのかが分かることは、あっくんに近付くことでもあった。あっくんの重く閉ざした心に触れるチャンスは、もしかしたら今しかないのかもしれない。だから逃げずに聞く。それが今の唯にできる全てだ。

「俺は声優の仕事が好きなんだよな、結局。だから、仕事が増えれば仕事頑張っちまうし、寂しい想いは確実にさせる。…だったら、誰も幸せになんて出来ないし、俺も幸せになんてなれない。本気でそう思ったんだ。そして一度思うとその気持ちはなかなか消えてくれなくて…。そうして今の俺ができあがった。…お前の〝好き〟って気持ちさえ信じられずに疑うような奴にな。」

 あっくんはそう言い終えると唯の肩に顎を軽く乗せた。
< 244 / 396 >

この作品をシェア

pagetop